ミノルタCLE
2008年4月

ミノルタCLEは今もって、最も気軽に使えるMマウントカメラの1つだ。
つい最近まで、「復刻して欲しいカメラ」のアンケートではCLEは常連であった。MマウントのカメラとしてはCLと並び小型軽量であり、なおかつ長い間、自動露出を備えたMマウントカメラとしても唯一の存在であった。しかし生産を終了してから長い年月が経ち、修理・サービス体制にも不安がささやかれるようになっており、復刻が期待されていたのだ。
そうやって期待されつつ、ライカと提携関係にあったミノルタを除いては発売されてこなかった、サードパーティによるMマウントカメラ。これが突然、2000年の前後に、一気に増えた。今から振り返ると、銀塩カメラの終末期に相当する時期だったのかもしれない。その中でもコシナのインパクトは大きかった。ベッサRは最初Lマウントであったが、すぐにMマウントに変更したR2が販売され、次いで自動露出を搭載したR2Aやファインダ倍率を変更したR3Aなど、一気に「お気軽Mマウント」の座をさらっていった。
より本格的なカメラも複数登場した。自動巻き上げと自動露出を備え、ライカとの高い互換性を持つコニカミノルタのヘキサーRFや、やはりコシナによるツァイスイコンなど、ベッサとライカの間を補完したり、ライカよりも優れた機能性を打ち出したカメラが登場した。自動露出という観点ではライカ自身がM7を登場させ、さらにはデジタルカメラであるライカM8やエプソンR-D1までも存在する。

1点目は、28mmのブライトフレームを持つ非常にクリアで覗きやすいファインダ。アイピースが角形で、ファインダ倍率が低いことも相まって、大きな28mmのブライトフレームまで非常に見やすい。ベッサは基線長が短く、これを倍率で補っているため、どうしても広角レンズのフレームに対応できない。その点、CLEはボディの幅の割にゆったりとした基線長を持つ距離計を備えているのが美点であるし、ボディデザインにも良い影響を与えていると思う。ベッサのように基線長が短い距離計は、どうも60年代の距離計式レンズシャッターカメラのように見えてしまう。またこれは善し悪しでもあるが、ファインダのブライトフレームの自動切り替えに対応している点も優れている。
2点目は、その小ささと軽さ。CLと同様に幅の小さなデザインと、300g台の重量。M6と持ち替えてみるとその軽さが実感される。ベッサもほとんど変わらない重量だが、幅が狭いためか持った感じでは差が大きく感じられる。
シャッターの形式もCLEの特徴だろう。ベッサやヘキサーRF、ツァイスイコンなど多くのサードパーティMマウントカメラは、縦走り金属幕シャッターを備えているが、そもそも一眼レフカメラ用のそれはシャッターショックが小さくない。事実、僕がベッサR2よりCLEを好む理由の最大のポイントは、このシャッターショックだ。音はM6よりは大きいが、ショックがないそのフィールは特筆出来る。他にも専用フラッシュでTTL調光が出来る点や、軽くて滑らかな巻き上げフィーリングなども優れた点として挙げられる。

一方でよく欠点として挙げられるのが、マニュアル露出時に露出計が動作しない点だ。自動露出のときにはAEロックが出来ない点も同様で、つまり逆光の時などには困ってしまうことになる。もちろん自動露出モードでの出目から考えたシャッター速度を選べば良いのだが、まどろっこしいし、それなら露出補正を使えばよい。もっとも露出補正の操作性もよくなく、シャッターダイヤルがロックされてしまうので、あまり積極的に露出をコントロールする気にはならない。ただし精度は悪くないので、ネガであればほとんどの場合そのままで撮って良いと思う。シャッター速度の表示も見やすいので、手ぶれと被写界深度を秤に掛けて絞り値を選ぶような操作は楽にできる。結局、リバーサルを使うのでなければAEのままで基本的に良いと言うことになる。そもそも、露出計のないカメラも不自由を感じずに使うし、露出計があってもこれをろくすっぽ見ずに勘で露出を決めてたりするので、使いやすいマニュアル露出が備わっているだけで御の字である。
もう1つの欠点は、ブライトフレームの切り替えの仕様が他のMマウントと異なる、という点だろう。やはり使い勝手がよいのは、CLEとセットの3本のレンズということになる。もっとも、これら3本でほとんどなに不自由することはないのだが、しかしその後、コシナからCLEユーザをねらったかのようなノクトンクラシック 40mm F1.4 が発売され、選択肢が増えたことは喜ばしい。このレンズは 40mm F2 より大口径で、CLEに装着してもバランスを崩さない程度に小さく、かつ味わいも異なるので、使い分けて楽しいレンズである。
CLEを楽しむ上で、もっとも気になるのは修理体制だろう。幸いなことにCLE専門の修理業者(ミナミカメラサービス)が存在し、一時期言われていたような悲観的状況にはない。大きなダメージを負ったものは修理が難しいようだが、これはメーカ自身による修理でもあり得ることである。そのような訳で、私はCLEを再評価し、これからも積極的に使っていきたいと思っている。
解説動画
各部解説




