ゼンザノンレンズ

ZENZANON MC 40mm F4



ニッコールとゼンザノンの40mm.



3本のゼンザノンレンズ.

ゼンザブロニカ用のレンズとしては,ニッコール40mm F4 と並び最も画角の広いレンズです.ブロニカEC-TLの頃にわずかの期間だけ販売されていました.その後再び,40mmレンズはニッコールのみとなります.レンズ構成は7群9枚で,一部のレンズ面にマルチコーティングが施されています.

このレンズの最大の特徴は,中判用超広角レンズとしては例外的に小さいことでしょう.ニッコールの40mmも他社の同クラスのレンズに比べかなり小さいのですが,このゼンザノンはそれよりも遙かに小さく,標準レンズと同等のサイズです.実際に,ゼンザノン80mm F2.4 と並べると,キャップを装着した状態では区別が難しいほどです.レンズ前面のフィルタ径も67mmで,標準レンズと同じです.ゼンザノンレンズは他にも,50mm F2.8と75mm F2.8 がほぼ同じ大きさ・デザインとなっています.

レンズ単体の重量は約330gと非常に軽量で,標準レンズと比べても30〜100gほどしか違いません.特にブロニカDやSは直進式の繰り出し筒を持つため,重量のあるレンズを装着すると手荒な取り扱いを避けねばなりませんが,このレンズでは標準レンズと同じように使うことが出来そうです.

カメラに装着してニッコールと比べてみると,実際にはこのゼンザノンのほうがわずかに画角が広いことに気付きます(規格では,実際の焦点距離に対し表記は5%までのずれが許されています).つまり,ブロニカ用の純正レンズとしてはもっとも画角が広いレンズとも言うことが出来ます.

このレンズの製造は 50mm F2.8, 80mm F2.4 と併せノリタ光学製であったとのことです(この点については現在も資料を収集しています).


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ZENZANON MC 50mm F2.8




3種類の50mmレンズの比較.

多くの標準レンズと同じF2.8の明るさを誇りながらも,非常に小型・軽量に作られたレンズです.同じ50mm同士で比べてみると,ニッコールの 50mm F2.8 はおろか,より暗い50mm F3.5 よりもはるかに小さいことは驚きに値します.ニッコールの 50mm F2.8 と同じ7群8枚構成で,またレンズのパワー配置もよく似た構成となっていますが,レンズ間の空気間隔がより少なくなったモダンな設計となっています.質量は330g程度で,上のゼンザノン40mmF4とほとんど同じですが,画角が少し狭いかわりに1段明るいため,非常に汎用性の高いレンズです.ブロニカは広角レンズほど近接時の撮影倍率が大きくなりますので,1本だけで何でもこなすには最適のレンズの1つと言えるでしょう.

このレンズは,冒頭の写真に示すように,ゼンザノン 40mm F4, 80mm F2.4 とは絞り指標を除き,全く同じ形状・大きさの鏡筒を持ちます.そのため前後にキャップをつけていると,絞り指標を見ない限り区別がつきません.製造面でもメリットがあったであろうこのようなレンズの設計は,相当な技術力がなければ実現できないものであると思われます.

このように非常に魅力的なレンズですが,40mm F4, 80mm F2.4 とほぼ同時期,EC-TLが発売された頃(1975年頃)に発売されたものの,すぐにカタログから姿を消します.ブロニカ経営状態悪化の噂が流れたことにより,ノリタ光学との間で取引停止となったことが短命に終わった理由であるようです.


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ZENZANON MC 80mm F2.4



後玉径の比較.Nikkor-P と Zenzanon.

ゼンザブロニカ用の純正レンズの中で,最も明るいレンズがこのゼンザノン 80mm F2.4 です.ゼンザノン銘の標準レンズとしては他に75mm F2.8, 80mm F2.8, 100mm F2.8 の3本があり,またニッコールの標準レンズにも2種類の設計がありますが,これらは全て F2.8 となっています.

ブロニカのレンズのうち開放F値が明るいものについて見てみると,過去の文献のいくつかにはニッコール 85mm F1.8 の記述が見られるものがあります.例えばアサヒカメラ1961年10月号のニューフェース診断室「ブロニカS」にもその旨の記載がありますが,実物のテスト結果や写真は掲載されていません.私自身,実物はおろか写真を見たこともありませんので,計画されていたものの,販売には至らなかったのではないかと思っています.また,サードパーティ製のレンズを見てみると,コムラーブランドのブロニカ用に 100mm F2 が存在します.また望遠域ですがやはりコムラーに 135mm F2.3 がありました.

レンズの設計は,他の標準レンズよりも半段明るいだけに少し贅沢になっており,5群6枚構成です.重量は約300gです.一般にクセノター型の5枚玉に比べガウス型の6枚玉はボケが美しく,像面の平坦性にも優れたレンズが多いように思われますが,このレンズも絶対的なボケの大きさも相まって積極的に開放で使いたいレンズです.

なお,このレンズの製造は富岡光学(現,京セラオプテック)によるものと言われていますが,当時の関係者5名からの証言によると,40mm F4, 50mm F2.8 と併せノリタ光学製であったとのことです(この点については現在も資料を収集しています).


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参考文献

当ページでは,以下の文献を参考にしました.