コムラーレンズ

KOMURA 135mm F2.3


プリセット絞りのため使い勝手はよくないが,絞り羽根は16枚と多く,常に円形を保つ.


ユニヘリカルフォーカシングユニットIと取り外したところ.取り付け部分はブロニカD,Sのマウント内側と同じ,径57mmピッチ1mm のねじマウント.


取り外したレンズヘッド部分を直接ブロニカSに装着したところ.

三協光機のコムラーは,ニッコールやゼンザノンとは異なりブロニカの純正レンズではありません.現在ではタムロンやシグマが販売しているような,いわゆるサードパーティ製レンズと言われているような立場にあるレンズです.ですが,ブロニカ用のサードパーティ製レンズとしてはもっともメジャーなものと言えるでしょう.

135mm F2.3 のこのレンズは,なんと言ってもこの F2.3 という明るさが目を引きます.純正の 135mm は F3.5 ですから,1.2段ほども明るいということになります.正方形画面をトリミングして長方形として使うことを考えると,ちょうど 35mm 判の 85mm F1.4 レンズに相当するとも言うことが出来るでしょう.ブロニカ純正レンズで最も明るいのはゼンザノン 80mm F2.4 ですから,それよりも明るいと言うことになります.もっともブロニカ用コムラーにはもっと明るい,100mm F2 というレンズもありました.

このレンズはプリセット絞り方式となっています.つまり絞りの開閉はボディとは連動しておらず,ピント合わせが終わってから絞り込みの操作が必要となります.レンズ先端に近い側で使いたい絞り値をまず決めておきますが,ボディに近い側の絞りを F2.3 にしておけば絞りは開放になります.ピント合わせが終わってから,ボディに近い側のレンズを回すと,もう一方のリングでセットした絞り値のところで止まりますから,そうして撮影することになります.操作は面倒ですが,その分絞りが高速で開閉する必要がなく,絞り枚数を多くすることが出来ます.そのため絞り込んでも開口形状が円形を保ちます.またこのような大口径レンズでは,絞り枚数が多いとその分1つ1つの絞り羽根が小さくなり,絞り開放にしたときの絞り格納スペースが小さくて済む(レンズ口径の割にレンズの寸法が小さくなる)というメリットもあります.

このレンズで構造上おもしろいのは,レンズ本体が「ユニヘリカルフォーカシングユニット」という部分と,レンズヘッド部分の2つに分かれる点です.レンズヘッド部分とフォーカシングユニットの間の取り付けはねじマウントになっており,これがちょうどブロニカD・S型のマウント内側のねじと同じ寸法(径57mm ピッチ1mm)になっています.またフランジバックも一致しているので,D型・S型でも無限遠が出ます.ブロニカS2などにも同じねじマウントがあるので,理屈の上では装着可能であるはずですが,実際には絞り連動レバーと干渉するので(無理をすれば付かないことはありませんが)おすすめはできません.ブロニカD・Sの絞り連動レバーは,レンズを絞り込むときに側面から出っ張るように動くので,干渉しないようです.

さて,このレンズの描写ですが,やはり明るさで無理しているということなのか,開放絞りではソフトなコントラストの低い写りを示します.とはいえ,開放絞りではボケが非常に大きくなり,被写界深度も浅くなりますから,柔らかい雰囲気を演出するにはソフトレンズ同様にそれなりの使いようがあるように思われます.開放で使ってこそのレンズですから,プリセット絞りの使い勝手の悪さもさほど気にはなりません.

作例  

(いずれも開放絞り,ブロニカS,Kodak T-MAX100)

参考文献

当ページでは,以下の文献を参考にしました.

  • [1]カメラ毎日別冊 1979年レンズ年鑑