レンズ比較:マーシャルプレス vs ブロニカ 105mm F3.5LS


レンズの外観

そもそも,ブロニカ用105mm F3.5LS は,レンズシャッター内蔵レンズという点で,ブロニカ用ニッコールの中でも特異な存在です.おそらく大型ストロボを用いるスタジオポートレート向けに,レンズシャッター式のレンズの要求があるため商品化されたものと思われますが,その割には焦点距離が中途半端であることや,テッサー型であり非常に硬い描写であることなど,いちから商品企画されたものであるにしてはやや自然と思えない節もあります.またレンズの外観も特異であり,通常のニッコールに見られるような形態をしていません.というのは,下の写真を見ると分かるように,第一レンズの前の鏡筒部の形状が変っているからです.<../brolens/l-75mmP.jpg">ブロニカ用75mm のレンズは,その円錐の側面に銘が刻まれていますが,このレンズではそれよりも一旦外周に広がった部分に銘が彫られており,そこからまた絞られて反射防止フード状になっているところがユニークです.またその継ぎ目のあたりを見ると,どうも一体形状ではなく,別部品のように見え,その前後で仕上げも異なります.なんとなく,テクニカルカメラのレンズボードに取り付ける,汎用のレンズシャッター式レンズを内部に組み込んだような形態と言えば分かりやすいでしょうか.
そして,この疑問は,マーシャルプレスを入手したときに,よりいっそう深まりました.ふと並べてみると,その銘板周囲のデザインがそっくりなのです.焦点距離,F値が同一なので,前玉径が同じであることは不自然ではないのですが,前玉の曲率や内部の筒の仕上げ方などどこをみてもそっくりなのです.そこで,簡単なテストをしてみました.

レンズには各反射面にコーティングが施されていますが,反射を0にすることは出来ないので,強い光源などが写りこむ様子が外から見えます.これは各反射面ごとに発生するので,3群4枚のテッサー型では7つの反射光が見えるはずです.またこの配置はレンズの形状や屈折率によって決定し,同じ光学系ではまったく同じに見えるはずです.そこで,天井の蛍光灯を写りこませてみたものと,撮影に用いたデジカメのストロボを写しこんでみたものとを作りました.結果を以下に掲載します.


カメラの配置は出来るだけ合わせましたが,レンズの微妙な向きやデジカメのピント合わせの問題などで,まったく同一の条件には出来ませんでした.ですが,その誤差を考えるとほぼ同じと言ってよいと思います.ストロボを写しこんだものでは,デジカメを固定するのに用いた銀色の三脚も写りこんでいますが,その点までそっくりです.(ブロニカ用のほうは,汚れを拭くのをわすれていることや,前鏡枠に反射した光などが入っていてやや見苦しいものになっていますが・・)

わずかな設計変更などの可能性は以前否定できませんが,このテストを見る限りでは,まったく同一のレンズであるか,もしくはわずかに設計が修正されている程度と考えてよいと思います.またマーシャルプレスは 1966年発売,ブロニカ105mm は 1960年台末〜1970年代初頭の発売ですので,時代としても共通と考えられます.マーシャルプレスは,生産された台数そのものがかなり少ないので,設計・生産したものの余ったレンズを化粧直しして出荷した・・というのは,ちょっと考えすぎでしょうか?