インスタントカメラで針穴写真機を作る
2020年4月

インスタントカメラで針穴写真機(ピンホールカメラ)を作ってみた。今回の場合、まずピンホールカメラを作りたいという動機があったわけではない。写真関係のニュースの中に、安価で単純なインスタントカメラ(ポラロイドカメラのように、撮影後すぐに写真のプリントが得られるカメラ)が紹介されていたのを見たのがきっかけである。見てみるとこのカメラ、フィルムの排出が手動式(クランクを回すとフィルムが押し出されてくる)で、シャッターもおもちゃのカメラにありがちな単速のエバーセットシャッターらしく、電気仕掛けの連動機構がなさそうだ。とするとレンズを外したりボディを切ったりして、色んな用途の工作に使えそう。それじゃいっちょ遊んでみるか、ということで
タカラトミーの Pixtossを買ってみた(6,000円はモノの単純さの割には意外と高いと思ったが)。わかっていたことだがボディは思いのほか大柄である。
普通はまずそこで一通り撮影してみてから改造なりなんなりするところだが、いまさらインスタントカメラ(チェキ)で撮るものもないし、ということで、一コマも撮影することなく改造について検討。このカメラは Instax miniのフィルムを使うので、画面サイズはほぼ 6x4.5判と同じである。そこでレンズマウントとシャッターを付けて手持ちのちゃんとしたレンズを付けてみるとか、逆にボディを切ってしまって中判カメラの後部にくっつけるポラロイドバックを作ってみるとか言うのも考えたが、大工事になるし、ピント合わせのことなどを考えるとそう簡単ではない。その点、ピンホールカメラであればすぐ作れそうだし、長時間露光で遊んでみるのも一興かということでピンホールカメラ化してみた。

購入前にあらかじめ画像検索して、カメラの内部のネジの配置を確認していた。どうやらここのネジを緩めれば、レンズ周囲のカバー部分が外れて、レンズやシャッターにアクセスできそう。で、実際に外周のネジ3本を抜いてみると想像通り前の黒いカバーは外れたが、シャッター部分はボディ後部と一体成型。よって別のシャッターやレンズマウントをつけるにはかなり大きくカットする必要があり、もとに戻せなくなる。しかしピンホールカメラにするには問題なく、前カバーを外して見えるレンズ周囲の5本のネジを抜けば前玉が取り外せ、また、シャッターの各部品にアクセスができる。

取り外したシャッター前板に、レンズははめ込みで取り付けてある。上図の赤矢印部分が引っかかっているので、この2つの爪を外しながらレンズ外周のプラ部品を反時計回りに回せばレンズ前玉が取り外せる。シャッター内部にはいくつかのプラ部品とバネがある。全部撤去してもよいが、少なくともシャッター羽根は取り外す必要がある。できればここのところに3Dプリンタかなにかで部品を作って、シャッターレバーでシャッターが開閉できるようにしたいが、今回は単に部品をいくつか撤去することにした。

レンズの後玉(このカメラはプラ製の2群2枚のレンズ構成で、ビトウィンシャッターである)を外すには、レンズ外周を押さえている部品のネジを2つ外すだけで良い。シャッター前板の裏側に、アルミ箔にまち針で穴を開けたピンホールを貼り付けて、元通りに組み立てれば完成である。ピンホールは、ルーペで確認すると直径が約0.2mm、またフィルム面からの距離が約30mmなので、F150程度の明るさになる。150/60 = F2.5のレンズと思って露出を合わせれば、その秒数を時間に直せば良い(例えばF2.5、1/60秒のシャッター速度で適正露出だったとすると、1/60時間、つまり1分の露光をすれば良い)。

撮影結果。ネガと違ってプリント時に露出の調整ができないのでやや露出にシビアなのと、最初は安全を見て?露出を長めに設定してしまったのでいくつか失敗をしたが、日中屋外の日向なら1〜3秒の露出で撮影ができる。一方、屋内では1分程度の露光でよいはずのところ、5分露光しても暗い写真になった。おそらく相反則不軌(暗い露光を長時間行ったとき、フィルムの実効感度が下がる現象)が強いのだと思う。フィルムの感度が高いため(ISO400-800程度らしい)、ピンホールカメラらしい長時間露光にはならないが、近接してもピントがぼけないピンホールカメラらしい写真の撮影が楽しめる。