改良版 機械式7セグ表示ユニット

ポイント

コンセプト

以前に作成した機械式7セグメント表示ユニットと同様に、カムを回転させることで0〜9のいずれかが表示されるユニットである。以前のユニットは薄型だったが、セグメントを中央に寄せるために輪ゴムを利用しており、それがいろいろな問題を起こしていた。1つは輪ゴムの力に逆らってセグメントを押し出す必要があり、特に0から1へ、または8から7へ変化するときのモーター負荷が高いという問題があった。また、輪ゴムが切れると表示できなくなることや、部品点数が多かったこともある。そこで今回、カムを1本にまとめるとともに、セグメントを押し出すカムと押し込むカムを2つずつ、すべてのセグメントに備えることで、輪ゴムのようなバネ要素を排除した設計を行った。

ガソリンエンジンの吸気・排気バルブ(ポペットバルブ)は普通、バネで閉じられていて、上からカムが押すことでバルブが開く。しかしエンジンが高回転になると問題が生じるので、イタリアのバイクメーカのドゥカティは「デスモドロミック」と呼ばれる機構を一貫して用いている。これは、バルブを開くカムのほかに閉じるカムも設けることで、バネに頼らずにバルブを強制的に開閉する方式である(実際には密閉性を高めるために弱いバネは使われている)。言ってみれば、この7セグユニットも「デスモドロミック方式」となったわけだ。

7セグでは縦と横のセグメントがあり、どうしても動かす向きが縦と横の2方向になってしまう。縦に配置したカム1本で動かすために、縦セグメントと横セグメントで異なる仕組みとしたが、カムそのものは同じプロファイル(出っ張りや引っ込みの大きさや斜面の傾き)で動くようにした。前回の輪ゴムを使用したものに比べてセグメントの動きを大きくして、セグメントの太さも太くでき、境界線の形も整えて視認性も高めることができた。

3Dプリントはどうしても精度に限界があるほか、積層痕のガタガタの影響で動きが悪い場合がある。今回は軽く動くことを主眼として、軸は3Dプリントでは造形せず、針金を用いた。軸は細いほど摩擦の影響を受けにくくなる。また前回のデザインではセグメントがレールに沿って平行移動していたところ、今回はすべて軸まわりの回転のみとして、動きのスムーズさを得た。カムは今回、バラバラにせず一体構造とした。印刷にサポートが必要になるが、そのぶん組付けで迷うことがなく作りやすい。セグメントも複雑な形状の割には、どれかの面を下にしてサポートなしにプリントできる形状とした。部品は、7つのセグメント、1本のカム、1個のフレームに加えて、退避したセグメントを隠す前面パネルで構成されており、部品点数はほぼミニマムと言える(モーターまわりは別途)。

針金を用意したくないという人向けに、3Dプリンタのフィラメント(直径1.75mm)でも作れるようにした。動画でわかるように、小さなサーボでも非常に高速に、軽快に動作させられる。バネ要素がないため、どれかの数字の表示が不安定になることもない。すべての機構は前面パネルの背後に隠れる範囲に収めたので、並べて使用することもできる。

例によって3DデータとプログラムはThingiverseで公開している。