単3・単4電池の自動分類ストッカー
ポイント- 一体構造で組立不要
- プリント時、サポートを必要としない
コンセプト
なにか3Dプリント入門用の簡単なものを作ろうと思い、Thingiverse などを眺めていた。そのなかでちょくちょく見かけるものに乾電池のストッカーがあった。また他に、硬貨を自動で仕分けるコインソーターも見かける。ならばこれらを合体させてみたらどうか?検索してみると、どうやらそういうものは世の中にないらしい(あるかもしれないけど)。実際、自動化するほどたくさん電池を持っていることはそうそうないし、硬貨と違って、異なる種類の電池が混じることもあんまりないんだけど、こういうものは動きがちょっと面白いとか、使うときに少し楽しく、ニンマリするとかいう要素が大事なのだ。ということで設計してみた。目標はもちろん入門用なので、組立不要の一体型でプリントも簡単、という線を守り、できるだけ単純になるように設計した。
設計
なにはなくとも電池を分類する機構は世間に例がないので、そこから手を付けた。電池や硬貨の種類を安定に見分けるためには、まずはそれらを安定に(常に同じ姿勢で)滑らせる必要がある。となると、硬貨でよく見るように、横向きに転がすのは電池の場合、斜めになったりするのでよろしくない。縦に滑らせるとなると、必然的に電池の直径で見分けることになる。幸い、単3と単4電池の直径はかなり違うので、穴に向けて電池を滑らせて、大きい方の単3はその穴に弾かれるようにすれば見分けることが出来る。ということで、上の図のような機構になった。荒っぽく電池を叩き込まない限り、かなり安定して分類できるものが一発で出来たので、あとはストッカー部分を作れば完成である。
電池の経路(内部の中空領域を図示)
しかしそのストッカー部分が少し厄介だった。 実は最初、ちょうど缶ジュースの自動販売機の内部のように電池をジグザグに導くような構造で設計したが、電池が斜めになったりしてうまく行かないことがあった。組み立て式にすれば設計容易だが、サポートなしに印刷可能な一体型、という制約条件の中で安定なものを作るのはちょっと容易ではないし、詰まったときの復旧も難しい。ということで割り切って、ストッカー部分は大部屋にして、電池を落として積み上げるだけにした。ただし、電池が斜めに落ちてくるとうまく積み上がらないので、上の図(電池の経路、つまり内部の空間の形状を表している)のように少しジグザグの経路を設け、電池を水平の姿勢に整えるような仕組みは作りこんである。それでも、特に最初の1本は落ちた電池が跳ね回って飛び出してくることがあるし、格納された電池が増えると出て来にくくなったりするが、まあここは単純さを優先することにして目をつむることにした。内部の中空領域の天井はすべて斜めにして、印刷時にサポートがなくても造形不良にならないように設計してある。
いったい、電池を自動分類したいというニーズがあるのかどうかというと怪しいし、1本ずつ差し込むぐらいなら手で分類したほうが早いという指摘もあった。そのとおりだと思う。これはあくまで、必要かどうかと言うと微妙だけど、ちょっと面白くて、ちょっと便利。製品化されるほどのニーズはないが、金型で一体成型するのは難しく、3Dプリンタなら容易に造形できる・・という、いかにも3Dプリントらしいデザインの一例である。
例によって3DデータはThingiverse, Printablesやinstructablesで公開している。