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ポイント

コンセプト

人気があるフラップ式ディスプレイを3Dプリンタで作るときの障害はフラップの製作にある、とニョキパタ時計のページで解説した。色塗りや印刷は面倒くさいし、きれいに仕上げるのが難しい。そこでニョキパタ時計ではフラップが単独で直立する構造としたが、もう少し作りやすくて単純なものはできないか。そう考えて、トランプをそのまま取り付けることでフラップ式ディスプレイを作る方法を考えた。

普通は「スプリットフラップ式」と言われるように文字を上下に分割してカードに配置する。その方法でも作れないことはないが、カードを2つに切るのが面倒なのと、トランプは裏返してなんぼのゲームで、両面が見えたほうが面白いことからそのまま全体を使うことにした。2分割にしなければフラップ間の隙間を小さくする必要がなくなり、この時計のようにドラムを外から挟み込むような構造の蝶番にできる(普通のスプラットフラップ式では2枚の側板の間にフラップが挟み込まれるように装着される)。これによりドラムが3Dプリンタで一体成型でき、部品点数が削減される。

フラップ式ディスプレイのもう1つの難点が電源投入時の位置把握だ。どのカードがどこにあるのかを把握しなければディスプレイとして使い物にならない。ニョキパタ時計のようにメカ式に繰り上がりが行われる方式であれば、カードの位置はあまり気にしなくても時刻合わせができるが、今回は3つの桁それぞれにモーターを装着する予定なのでそうも行かない。そこで、回転式デジタル時計と同様にモーターを無理やり止めて減点出しする方法を考案した。フラップ式ディスプレイは普通、一方向にしか回転しないので、逆回転を位置合わせに利用する。逆回転のときだけ、ある特定の位置で引っかかるフックを設け、そこに引っかかった位置を原点(基準)にする。逆回転は電源投入直後の1回だけ行い、その後はステッピングモーターのステップ数で位置を制御する。

フラップを取り付ける部分も簡略化した。The Timing Chainsでは札を接続する部分にパチンとはめ込める構造を採用したが、ここのデータをそのまま持ってきて利用し、ドラムに蝶番を押し込むだけでパチンと装着できるようにした。

結果的に1つのユニットはたった3種類の部品(本体部分、回転するドラム、ちょうつがい)で構成することが出来た。例によってプリント時にサポートも不要な形状にした。

マイコンで制御するのでフラップの順序は必ずしも順番になっている必要はない。この手のフラップ式ディスプレイは上の動画のように、たくさんのユニットが突然、同時に動き出し、目的の数字に達したものからパラパラと停止するのが面白い。そう思っているので敢えてフラップの順序をランダムにし、時刻が変わるときの動きに変化をつけた。特に毎正時は全ての桁が変化するので見た目に面白い。

この時計もちょっと音が大きいので普段使いはしづらいが、3Dデータとプログラムは Thingiverseinstructablesで公開している。