単3電池の自動充電器

ポイント

コンセプト

3Dプリンタはもともと、職場(研究室)で多機能な高級機を導入して使用していたので、ある程度の利用ノウハウがあった。いろいろなものが作れて便利そうなので私用にも欲しくなり、2020年1月に、自宅用に光造形タイプ(Anycubic Photon)を購入した。かなり高精度で、カメラの部品などを作るのには良かったが、大きなものは作れない。当時、エンジン式のホバークラフト作りに凝っていたこともあって、半年後の2020年の7月に少し大きめのFDMタイプ(Anycubic Mega X)を追加し、2台体制になった。精度は落ちるが、やはり造形サイズは偉大で、ホバークラフトだけでなくいろいろ作れそう。ということで、ちょっとした家のものも作ってみることにして、最初に作ったのがこの充電器である。最初のわりにはかなりうまくでき、その後、電池の充電に日頃から活躍している。Thingiverse でデータを公開した最初の作品にもなった。

設計

そもそも同様の自動充電器には市販品がある。便利そうなので欲しかったが、かといって買うほどでもないな・・・と思っていたので、ちょうどこれが制作テーマの俎上に上がった。そこでまずは、内部の電池セット部分を作成開始。といってもドラム状の部品で電池を1つ取り込んで定位置に持ってくるだけのもので、サーボモータはラジコンの操舵に使っていたものである。しかしここで早速、少しつまづいた。電池が1本なら間違いなく動くが、2本以上セットすると、電池同士がスクラムを組んだように引っかかって落ちてこないのだ。この手の落ちる・流れるメカニズムは、実はけっこう難しく、後のBB弾を用いたディスプレイなどでも苦労することになるが、ともあれ、積み上がった部分をかき混ぜることで解決することにした。具体的には、ドラムに突起を設けたのだが、これが効果的で、ミスフィードはまったくなくなった。上の動画にその経緯もまとめられているので見てみてほしい。

電池のセットができればあとは簡単である。セット位置にはボールペンのバネを用いた接点を設け、電池が2本しかセットできない古い充電器から配線。さらに、充電器のLEDを micro:bit で読み取ることで充電完了を把握するようにした。あとは筐体である。本体とフタ、電池がたまる箱の3つを設計し、充電器や micro:bit も収まるようにして完成。micro:bit にはLEDディスプレイとスイッチが2つあるのがちょうどよかった。電池の取り込み中の表示のほか、今何本目を充電していて、何分経過しているか。またスイッチを押すと、電源投入以後に充電したすべての電池の充電時間を表示するようにした。この充電時間の表示はかなり重要で、劣化した電池や、接点の汚れなどで充電がうまくできなかった電池を見つけ出すのに便利に使っている。市販品は電池の向きを問わないという特徴があり、それは実装しなかったが、かわりにこの精密な充電時間表示は市販品にはないチャームポイントとなっている。

充電器本体は廃品利用なので、部品代は micro:bit まわりとサーボぐらいで、材料代を加えても4000円ぐらいだろうか。市販品を買うよりは安くついたが、値段ではないものづくりの面白さを再認識した。うまくできたので公開することにし、動画を作成した上、3DデータとプログラムをThingiverseに公開した。最初の割には上出来だったし、後の時計に比べても実用的なのだが、時計やらなんやらに比べ、アクセスやLike数は伸びないのは不思議に思っている。