Boston Common

 

 

 

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冬のボストンは,寒い. 正直言って,「よくこんな所に住んでいられるな」と思うこともある.雪も多いが,それはまだいい.本当に寒いのは風の強い日で,屋外に5分か10分いると体の芯まで冷えてしまう.幸い自宅から路面電車の駅までは5分ぐらいだし,オフィスはもっと近いので大丈夫だけれど,寒い日はどこにも出かけずに家にこもっていようかと本当に思う.

緯度が高いだけに日が沈むのも早い.最近は日がのびてきたけど,12月は4時過ぎには日が沈んでしまっていた.夕暮れの日差しでも写真に撮ろうかと準備して出た頃には実は手遅れ,ということもあった.その頃に一度 "Sunshine state" ことフロリダ州へ出張があり,あまりの落差に愕然としたこともある.

でも寒ければ寒いなりに手だてはある.ちゃんと防寒して都心の公園に出かけると,やはりわずかでも日の光を浴びるためか,夏ほどではないもののそれなりの人たちが公園を散策している.スワンボートは9月の後半には終業してしまい,その池は11月になると凍ってしまうのだけれど,もう1つの「カエル池」ではスケートが出来る.治安もよいのですっかり日が暮れるまで撮影しながら散策し,その後ボストン交響楽団が演奏するモーツァルトを聴いてから帰宅した.

ニコンS2はこれまで2度手に入れ,2度手放してしまっている.一度目の理由は忘れた.二度目はより高機能な「ニコンS3」の復刻版を手に入れたので,さすがにもう用はないと思って,文句のない個体だったけれど知人に譲った.でもまた再び,ニコンS2を手に取ってしまった.1つはそのデザイン.S3やSPも好きだけれど,やっぱりこのエッジの効いた「男性的」な形と,徹底的にクロムメッキされたいわば「女性的」な,工芸品のような美しさがいい.必要にして十分な使い勝手も,まさに simple is the best.ちょっと潤滑切れの感触だけれども,氷点下でカメラにさわるのもいやになるような気温だと,寒冷時の動作に定評のあるこのころのニコンは信頼出来る.

レンズは,最初に持っていた S2 と同じ「くせ玉」の F1.4.二度目に買ったときはより「まとも」な F2 にしたが,このころと違って最近はモノクロ中心で,絞ったときにはカミソリのように切れる F1.4 が再び魅力的に感じる.今回のレンズはわずかな拭き傷さえもなく完璧な状態で,50年を過ごしてきたとはとても思えないものだった.当時はかなり無理をした F1.4 だけに絞り開放ではものすごいハロが出るけれども,これを至ってまじめに,超高精度に磨いて組み立ててあるという落差が,骨のある使い心地を与えてくれる.

Nikon S2, Nikkor-S.C 5cm F1.4
Kodak BW400CN

(upload : Feb., 2009.)
(現在スキャン環境がないため拡大写真はありません)