航空用計算尺のついた腕時計 BREITLING B2

番外編として,航空用の回転計算尺が備えられた腕時計を紹介する.ブライトリング (BREITLING) は伝統的にパイロット等向けの航空用腕時計を古くから製造しており,ナビタイマーシリーズを代表に航空用計算尺が付属した腕時計も多く作られている.しかし回転式計算尺が付属したモデルはその構造上,防水性が低く,日常生活防水程度であることが多い.これに対し,かなりマイナーであるが,より高い防水性を備えながらも回転計算尺を備えたモデルがいくらかラインアップされている.ここで紹介する B2 はデジタル・アナログ混載モデルの BREITLING B1 に引き続き,機械式クロノグラフを搭載して2000年ごろに販売されたモデルである.なお,B1/B2 は現在,クロノスペースシリーズにモデルチェンジしているようである.

さて,この航空用計算尺であるが,これは特に飛行時に必要となる時間と距離,速度に関する各種計算が効率良く出来るように作られている.通常の計算尺とは異なり数値が 10〜100 の範囲で記載されており,12時の位置に 60 が位置するようになっている.これは中央の「分」を基準とし右に「時」,左に「秒」への変換が出来るようになっているためで,"10" "60" "36" の位置がそれぞれ赤色で着色されており目立つようになっている(もちろん 1, 60, 3600 に対応するが,計算尺の常で位取りは無視される).その他,NAUT, KM, STAT の各指標によりそれぞれ「海里」「キロメートル」「マイル」の間の換算ができる.これらを駆使して時速・分速・秒速やMPH (マイル/時)などの変換が可能で,またまたその内側に刻まれた 1:00 などの目盛りにより「時:分」の60進表記を分に変換できたりするので,本来は非常用,またはファッション的な要素であるとはいえ,意外と日常生活でも実用的であるといえるのではないだろうか.

上の冊子はブライトリングの機械式腕時計の購入者に配られた冊子である.この冊子にも少しだけ計算尺の使用法が書かれており,通貨の換算が例題となっている.常時身につけるものであるから,このようなごく日常的な用途にも活用しやすい.自分自身では,海外主張の時などのほか,日頃でも「7個入り500円」と「12個入り850円」のどちらが割安か・・といったような計算に時折使用することがある.70のところに50を合わせると,12のところにその単価での価格が現れ,すぐにどちらがお得か判断できるのである.

この B2 ではベゼルを回転させると,その内側の計算尺の滑尺部分が少し増速されて回転する.風防(ガラス)ごと回転させる方式では防水性が得られないため,ケース外につけられたベゼル裏側のラックで内蔵された小さなピニオンギアを回転させ,その回転がケース内側に伝達され再びピニオンギアを回転させ滑尺部分を動かすようになっている.このピニオンの軸がケースを貫通しているところに防水のためのOリングが取り付けられており,高い防水性を与えることが出来るわけである.

ブライトリングの腕時計は私が入手した時に比べると3倍ほどの価格になってしまっており,ますますおいそれとは購入できなくなってしまった.しかし他社でもいくらか,計算尺を備えた腕時計は売られている.