実は便利な円形計算尺 コンサイス No.300
C/D尺の切れ目から内側を滑尺とすると,表裏の滑尺は独立しており,それぞれ独立に回転する点が一般的な計算尺と異なる点であるといえる.
乗除算の計算例.
LL尺の使用例.
三角関数の使用例.
次に,S 尺上の 36.9°がカーソルの線に合うように滑尺を回転させる.sin(36.9°) は斜辺の長さと最も短い辺(長さ3の辺)の比率であり,それが 0.6 ( = 3 / 5) であることがC尺上で読み取れる(青丸).このとき,C尺の 1 に対向した D 尺上の値 5 (緑丸)から,対角線の長さが 5 であることが分かる.要するに,対角線を引いて現れる三角形のもっとも小さい角の角度をαとすると,tan(α) = 3 / 4 からαを求め,つぎにこのαから sin(α) = 3/5 を求めることにより対角線の長さ 5 を得ている.
なお,ST尺は 6°以下の sin と tan の計算に利用し,T1/T2 尺は 6°〜84°の範囲の tan を計算するために利用される.40秒より小さい角の sin/tan は,角度をラジアンに直し,sin(θ) ≒ tan(θ) ≒ θ であることを利用して求める.
円形計算尺は目外れがなく大変使いやすいが,この CONCISE No.300 では目盛りの一致精度が若干低い点が気になる.最初の写真でも分かるように,一箇所を精度良く合わせても,他の箇所で線の太さ程度のずれが生じることが多い.目盛りの印刷位置と円盤の機械的な中心を一致させるのが難しいのかもしれない.