普通のアナログ時計にカレンダー機能を追加

ポイント

コンセプト

先日、複雑な永久カレンダー付きの時計を作成したが、今度は一般的な、小の月は補正が必要なカレンダー付きの時計を作ってみた。というのは、120年前のボンボン時計を修理するために時計の風防ガラスが必要になり、ダイソーで購入した300円の時計の機械部分(ムーブメント)が余ったからである。どうせならこのムーブメントも使ってなにか違った時計も作ってみよう。と思ったのがことの始まりだが、実は先日の永久カレンダー付きの時計がそれになるはずだった。

じつはその永久カレンダー付きの時計はそもそも、その余ったクォーツムーブメントを使う前提でまず設計した。しかし、バネ(輪ゴム)でレバーを復帰させる部分などがあり力が必要で、動かしてみると、懸念していたようにムーブメントの力が足りなくなる。負荷の調整により動くように出来るかもしれなかったが、動作が不安定なものはデータを公開するとクレームになるのであっさり撤退し、他の時計と同様にステッピングモーターで動かすようにした。そして今回、より単純で負荷のかからないメカで時計を作り直したわけである。実際のところ、小の月は年に5回しかないのでそのつど修正すればよく、簡単で作りやすいものになったので、2種類の時計にバリエーションが広がったのは良かったと思う。

設計

カレンダーを動かすだけなので機構は単純だが、クォーツムーブメントを使うためにいくつかの制約を受ける。1つは、軸には針を取り付けることしか考えられていないために、その力を取り出すスペースが針とムーブメントの隙間に限られることである。歯車を隠そうとするとスペースが足りず、分針の下にすべてを収めるのが難しいので、敢えて前面パネルに歯車が露出したデザインにした。時針2周で日付を進める必要があるため、1:2の減速ギアはどうしても必要である。また日付や曜日を表示する円盤は、中央に居座るムーブメントに干渉しないように大きくする必要がある。日付は31個もあってどのみち大きな円盤が必要だが、それに対して7通りしかない曜日表示にはいささか円盤が大きすぎる。

大きな円盤を1/7回転させるには大きなカム(上図右の、えんじ色の部品)が必要だが、カムを大きくすると今度はそのカム自身がムーブメントに干渉してしまう。結果として、上の図のように曜日を動かすカムには2つの爪をつけて円盤を回転させるようにした。もっとも、文字盤に空きが多いので曜日を2周期表示して、1日に1/14回転させるようにしても良かったかもしれないし、曜日も略語でなく WEDNESDAY のように(そう、ちょうどロレックスの腕時計「デイデイト」のように)フルスペリングで表示しても良かったかもしれないが、文字サイズのバランスのこともあってこうなった。文字はあまり小さくすると3Dプリンタできれいに再現できなくなる。また右の日付のメカは普通の時計と同じようだが、円盤はいずれもカムに自重で乗っかっており、回転軸を中心にして回るわけではないので、設計思想は普通の歯車とはかなり異なる。

今回の時計は前作より少し小ぶりで(永久カレンダー型の直径25cmに対し、直径18cm)、また、見た目に面白いメカが後部にないため、スケルトンにはせずに不透明な文字盤にした。スタンドをつけると置き時計として使用でき、外すと壁掛けにできる。あたりまえだが、これまでに作った時計とは異なり電池式のため電線を引く必要がなく使いやすい。

例によって3DデータはThingiverse, Printablesinstructablesで公開している。