尺度の多い金属製計算尺 Pickett N3-T
Picket N3/N4 の特徴として,平方根・立方根を高精度に計算するための尺度を持つことが挙げられる.もっとも A/B 尺や K 尺でもこれらは求めることができるし,任意のべき乗はLL尺で計算可能なので必要性は高くないと思われるが,それらを度外視しても,表には K A [B ST S T1 T2 CI C ] D DI が置かれ,裏には LL0/LL00 LL1/LL01 DF [ CF CIF Ln L CI C ] D LL2/LL02 LL3/LL03 が置かれており,汎用計算尺として不足はない.惜しむらくは,Pickett の計算尺にはP尺がないことだろうか.
前述のように,Pickett には 34 もの尺度を持つ Pickett N4 が存在する.しかしこの計算尺は少し特殊で,LL尺が常用対数(底が10)に基いて刻まれている.このためLL尺の最大値が 1010と大きいのは良いのだが,LL1 や LL0 の左側が 1.01, 1.001 に合っておらず読みにくい上,x が 0 に近いときの近似式 ex ≒ 1 + e をLL尺と組み合わせることが出来ない.またこの面の CF/DF 尺はπ切断でも√10切断でもないことや A/B や K 尺がないこと,そのかわりに使用する機会がほとんどなく,exからでも計算できる TH/SH が置かれていることなど,あまりバランスの良い計算尺であるとは言いがたい.