WiFiで時刻合わせする3針式アナログ時計

ポイント

コンセプト

電波時計が多く売られているが、送信所が全国に2箇所しかないことから地域によっては電波が弱く、建物の奥では使い物にならなかったりする。それに対しNTPというパソコンやスマホの自動時刻合わせの仕組みを用いると、WiFiが整備されたところなら安定して時刻合わせができる。これまでに作成した時計でもこの仕組を用いたものが多いが(1, 2, 3, 4, 5, 6)、それらには共通点があった。全てデジタル式なのである。そこで今回、アナログ式のWiFiクロックを作ってみることにした。

もう1つの理由は、アナログ式のWiFi時計はほとんど市販されていないということがある(デジタルのものは安価で見つかる)。企業や公共施設向けの製品はあるが、耐久性のある設備時計だからということもあるのか、なんと3万円以上もする。しかし、これまでに作った時計のようにESP32のWiFi搭載マイコンとステッピングモーターを使えば、電子部品は1000円以下で揃う。となると、あとは時計部分を3Dプリントすれば良い。

ただし普通に歯車で秒針・分針・時針を連動させると、時刻合わせのための回転数がとても多くなり、時刻合わせに長時間を要してしまう。秒針を省略すれば我慢できる程度の時間にできるが、今回はあえて秒針あり、かつ、短時間で時刻合わせができる構造とした。ただしモーターの個数は増やしたくない。そこで、秒針・分針・時針が互いに引っかかるような構造にして、秒針の往復運動でそれぞれの針の位置を制御した。12時の位置には時針を引っ掛ける突起を文字盤に設け、これを用いて電源投入時の原点合わせも行う。要するに、これまでのデジタル時計(1, 3)で複数の円筒を制御するために用いたのと同じ仕組みである。

上の図で青い部品は、分針や時針を保持するための摩擦を与える部品である。3つの針が同軸となっているために、軸同士の接触で針が勝手に回ってしまうことがあり、軸の内面・外面をなめらかに仕上げることと、適度な摩擦を与えることが重要である。前述のように駆動原理が従来の円筒形デジタル時計と同じであるため、プログラムも流用し、それをアナログ時計向けに少修正(秒針をゆっくり動かしたり、回転中の時間経過を勘案して停止位置を微調整したり)した。

秒針が行ったり来たりするので、時計としてはかなり変な動きだが、逆に言うとちょっと賢い感じもする。毎分、複雑な動きをするので、病院の待合室などちょっとした暇つぶしが必要な場所においたら楽しそうだ。

例によって3DデータとプログラムはThingiverseで公開している。