時針が浮いた文字盤

ポイント

コンセプト

Hollow ClockHollow Clock2はシンプルながらも見た目に魅力的で、Thingiverse でも多くの Like を頂き、多くの人が作ってくれている。作者冥利に尽きるが、1つ、やむなく妥協した点があった。時針の処理である。時針は当然にして分針よりも短いので、本来であれば周囲とはつながっているべきではない。太さや塗り分けでごまかしてはいるものの、なんとかできないか。そのトライの1つ目がこの文字盤キットである(そして、後にHollow Clock 3として、よりシンプルな形に発展した)。

時針を回すには分針を 1/12 で減速すれば良い。当たり前だが、実は歯車があるだけではダメである。歯車の軸を固定する部分が回ってしまうと、速度の変換ができない。なので Hollow Clock シリーズの場合、中央部のギアを台座から支える部材を追加する必要がある。しかしそれでは,まさに台無し。なんとかその支えをなくせないか。と考えて、自重でぶら下がる構造を考えた。そうしてできたのがこの Flying Hands Kit である。

仕組みは単純で、長針の回転を2セットのギアで 1/12 に減速している。歯車の歯数は、できるだけ前後の2セットで比率が近くなるようにした。56歯とか14歯とかのちょっと半端な(7の倍数の)歯車があるのはその結果である。また設計上のポイントとして、歯車同士ができるだけ引っかかりにくい構造とした。歯車がどこかに引っかかると、分針の動きにつれて時針とギア全体が大車輪のように回転してしまう。自重でちゃんと動くためには滑らかさは必須であるが、軸をガタガタにするとギアが傾くので、重量バランスを崩さないようにする必要があった。時針は針の重みでバランスが偏るが、それがあると時刻表示がずれるので、針の反対側におもりを取り付けるようになっている。

時刻合わせでは、時針とギア全体を、前述したように大車輪するように1回転させると、きっちり1時間、進めたり戻したりできる。ただし時計回りに回すと1時間遅れるという反対の関係になっている。この文字盤は分針の円盤だけ回せば時計として成立するので、そのまま Hollow Clock ないし Hollow Clock 2 に取り付けられるバージョンのほかに、減速ギアを内蔵していないシンプルな台座も設計した。

単純だし、割と当たり前っぽい構造だが、作ってみたら、時針がピンと斜め上向きに立ったりして、思った以上に浮遊感があった。全く歯車などが見えないミニマルな造形もよいが、ギアむき出しのメカニカルな造形にも人気があり、その点で、こういうふうにちょっとギアが見えているのも悪くない。

この、重力を用いてギアを規制するアイディア、新発明だな・・と悦に入ってネットを調べていると、なんとJefferson Golden Hourという、Hollow Clock に似た時計(ただしがラス板で針が支えられている)が、同様に重力で時針を動かすメカを搭載していることを知った。よって時刻合わせ方法も同じである。普通はガラス板として、回転するものと固定したものの2枚用いるところ、この Golden Hour では1枚で済ませるのに成功している。要するに同じ仕組みである。これを見つけて、まさに「日の下に新しきものなし」を思い知ったのであった。

例によって3DデータとプログラムはThingiverseで公開している。