Hollow Clock 3(空洞時計3)
ポイント- 時針が周囲の円とつながっていない構造
- スリムで小さい台座
コンセプト
文字盤部分が透明・・というよりも、透明板もなにもない「空洞時計」シリーズは、ラジコン用の小型サーボで動作し非常に部品点数の少ないHollow Clockと、より静かでなめらかに動作するHollow Clock2の2種類を作り、それぞれかなり好評を博しているようだ。さらに、時針が周囲とつながっていない構造で、むき出しの歯車の見た目も楽しいFlying Hands Kitも作成し、一段落していたが、実は心の奥に、若干の課題を残していた。そう、やはり時針は周囲とつながっていないのが理想的だし、歯車も見えていないほうがより不思議感が高く、デザイン性も優れているには違いない。頭の中にはいくつかの機構が浮かんでいるが、中央のギアボックスを小さくするには高精度な部品が必要で、家庭用3Dプリンタで作るには小型化にも限界がある。そう思って放置していたが、やはり一度ちゃんと作ってみることにした。それがこの Hollow Clock 3 である。
分針のほうが時針よりも長いので、分針が周囲とつながって直接回転され、時針はその回転を打ち消すように逆回転するメカニズムになるのは必然である。しかしそれを実現するメカニズムにはいろいろな選択肢がある。大きくなってしまいそうなもの、作れても精度が確保できなさそうなもの、特殊な部品を使うものなどは排除したい。周囲と中心を結ぶシャフトはあまりゆっくり回転するものよりも、高速に回転するもののほうが掛かる力が弱いので細くでき、がたつき(バックラッシュ)の影響も抑えられる。そういういろいろな要素を勘案して、結局上の図のように中央部分にはウォームギアを用いた減速機構を置き、周囲には傘歯車というよりもラック&ピニオンのような構造にすることにした。
時針は分針の 1/12 倍速で回転するので、まずは中央のウォームギアの減速比を 1/12 に設定。そして、分針が1回転する間に時針を、分針に対して相対的に、1回転弱(正確には 11/12 回転)だけ逆回転すればいい。そうすれば 0:00 から分針が1時間で1回転し 1:00 なったときに、時針は1時をちゃんと指すことになる。よって周囲のラックギアを110歯、それに対応するピニオンギアを10歯とし、分針1回転(1時間)でシャフトが11回転する構造とした。中央のウォームギアセットは精度が求められるので、いずれも曲面的な包絡線を持つ少し凝った造形としてある。
他の部分はさほど精度を求められないので簡単だが、分針が固定されたリングをできるだけスマートに、簡単に取り付けられる構造にはこだわった。シャフトが少し斜めなので、ラックギアの歯もハイポイドギア風に傾けてある。最終的にこのデザインを成立させたポイントは、2本の棒からなる分針・時針のデザインだろう。ウォームギアを中央に備える関係上、周囲と中央をつなぐシャフトは斜めの配置になってしまうが、これを細く見せたほうが美しい。よって、その斜めに軸が通るという性質を利用しつつ中抜きにすることで軽快感を出した。周囲のリングとの接続部が細く、不思議感が高まることや、中央のギアボックスの大きさが気にならない見た目にもなった。
例によって3DデータとプログラムはThingiverseで公開している。